不登校や学校生活に悩みを抱えるお子さんの教育選択肢として注目される「いろどり学園」。しかし、すべてのお子さんに適しているわけではありません。お子さんの特性や状況に応じた最適な支援環境を見つけるためのガイドをお届けします。
いろどり学園とは?基本的な理解から始めよう
さいたま市が令和8年4月に開校する「いろどり学園小学部・中学部」は、文部科学省指定の「学びの多様化学校」です。不登校児童生徒の実態に配慮した特別な教育課程を編成し、一人ひとりに寄り添った教育を提供します。
いろどり学園の基本概要
対象:さいたま市内在住で、原則年間30日以上学校を欠席している(していた)児童生徒 定員:全体で最大300人 キャンパス:市内6か所(本校・岸町、北、堀崎、あいぱれっと、美園、岩槻) 教育課程:通常の学校の約7割の授業時数による特別な教育課程
3つの特色
- いつでもどこでも学びにアクセス:対面・オンライン・メタバースを活用
- 自分らしく学べる教科「未来工房」:興味・関心に基づく個別学習
- 安心できる居場所:専門職による相談支援
いろどり学園に向いているお子さんの特徴
学習意欲が比較的高いお子さん
基本的な学習習慣がある プレ開校での報告によると、参加した児童生徒は「学習意欲が高く、1日5コマの授業に前向きに取り組んでいる」とのことです。
集団での学習に参加できる 複数学年が同じ教室で学習するため、他の児童生徒がいる環境での学習に抵抗がないことが重要です。
タブレット操作ができる 授業はタブレット端末を使用したオンライン配信が中心となるため、基本的なICT操作ができることが必要です。
コミュニケーションに大きな困難がないお子さん
オンラインでの発言や質問ができる 挙手ボタンやチャット機能を使った授業参加が基本となるため、ある程度のコミュニケーション能力が求められます。
集団の中でも自分のペースを保てる 少人数とはいえ集団環境のため、他の子どもたちがいても集中できることが大切です。
将来への目標や希望を持てるお子さん
社会的自立への意識がある いろどり学園は「社会的自立を目指す」ことを目的としており、将来への漠然とした希望でも持てることが重要です。
学校という枠組みでの学習を希望している 正式な学校教育を受けたいという本人の意思があることが前提条件となります。
いろどり学園に向いていない可能性があるお子さんの特徴
集団環境に強い困難を感じるお子さん
感覚過敏が強い 複数の児童生徒が同じ教室にいることで、音や視覚的な刺激が気になってしまう場合があります。
集団不安が強い 他の子どもたちの存在自体がストレスとなり、学習に集中できない場合があります。
個別的な配慮が特に必要なお子さん
重度の学習困難がある 通常の学校の7割とはいえ、一定のペースでの学習進行についていくことが困難な場合があります。
コミュニケーションに大きな困難がある オンライン授業での発言や質問、チャットでのやり取りが困難な場合があります。
学習への準備が整っていないお子さん
生活リズムが大きく乱れている 9時30分からの授業開始に間に合わない、1日5コマの授業に参加することが困難な場合があります。
学習への意欲が低下している 不登校の期間が長く、学習に対する拒否感が強い場合があります。
放課後等デイサービスが向いているお子さん
いろどり学園が適さない場合でも、さいたま市には多様な支援選択肢があります。特に発達特性を持つお子さんには、放課後等デイサービスでの個別支援が効果的な場合があります。
放課後等デイサービスの特徴
個別性の重視 お子さん一人ひとりの特性や興味・関心に合わせた個別的なアプローチが可能です。
柔軟な時間設定 学校のような時間割にとらわれず、お子さんのペースに合わせた活動ができます。
専門的な療育 発達特性に応じた専門的なプログラムを提供できます。
放課後等デイサービスが向いているお子さんの特徴
高い集中力を特定分野で発揮する 興味のある分野(ロボット、プログラミング、ものづくりなど)では驚くほどの集中力を見せるお子さん。
個別対応でこそ力を発揮する 集団では緊張してしまうが、信頼関係のある大人との1対1や少人数では本来の力を発揮できるお子さん。
感覚過敏や感覚鈍麻がある 特定の感覚に敏感であったり、逆に鈍感であったりするため、環境調整が重要なお子さん。
FabriCoの個別支援:発達特性を活かすアプローチ
さいたま市には、発達特性を持つお子さんに特化した支援を提供するFabriCoがあります。
FabriCoの特徴
所在地:さいたま市南区別所5-15-2 専門分野:ロボット・プログラミング・ものづくりに特化 理念:「Un-School(学校っぽさを問い直す)」
FabriCoのアプローチ
興味・関心を最大限活用 お子さんが自然と集中できる分野を見つけ、それを学びの入口とします。
対話的な学び ものづくりを通じた対話により、自己理解と他者との関わり方を育みます。
個別〜小集団での療育 お子さんの状況に応じて、完全個別から小集団まで柔軟に対応します。
詳しくはFabriCoの公式サイトをご覧ください。
FabriCoが向いているお子さんの特徴
ものづくりに興味がある ロボット、プログラミング、工作などの活動に自然と興味を示すお子さん。
視覚的・体験的な学習が得意 言葉での説明よりも、実際に見て触って体験することで理解が深まるお子さん。
自分のペースで学習したい 集団のペースに合わせることが困難で、自分なりの学習スピードを持つお子さん。
創造性を発揮したい 決められたカリキュラムよりも、自分のアイデアを形にすることに意欲を示すお子さん。
包括的支援の重要性:相談支援事業所の活用
お子さんの状況によっては、複数の支援を組み合わせることが最も効果的な場合があります。
相談支援事業所の役割
全体調整 教育、療育、医療など複数の支援を効果的に組み合わせる調整を行います。
制度利用の支援 複雑な障害福祉サービスの申請や利用計画の作成をサポートします。
客観的な評価 定期的に支援内容を見直し、お子さんの成長に合わせて調整します。
FabriCoの包括支援
FabriCoでは、療育に加えて相談支援事業所「Un-School 計画 相談支援」も運営しており、教育と療育を一体的にサポートする包括的な支援を提供しています。
包括支援の例
- いろどり学園での学習 + FabriCoでの療育
- 教育支援センター + 放課後等デイサービス
- 在籍校での部分登校 + 個別療育
詳しい相談支援についてはこちらをご確認ください。
さいたま市の多様な支援選択肢
お子さんの状況に応じて、様々な支援を組み合わせることができます。
1. 公的教育機関
いろどり学園:学習意欲があり、集団環境での学習が可能なお子さん 教育支援センター:対面での学習を希望するが、学校は困難なお子さん Growth:ICTを活用したオンライン学習を希望するお子さん(令和7年度で終了予定)
2. 福祉サービス
放課後等デイサービス:発達特性に応じた個別的な支援が必要なお子さん 児童発達支援:未就学児や基本的な発達支援が必要なお子さん
3. 民間支援機関
フリースクール:多様な教育理念に基づく学習環境を求めるお子さん 個別指導塾:学習面での個別サポートが必要なお子さん
適切な支援環境の選び方
お子さんの状況を整理する
興味・関心
- 何に興味を持っているか
- どんな活動に集中できるか
- 得意な学習スタイル
困難さの程度
- 集団参加の可能性
- コミュニケーション能力
- 感覚過敏の有無
現在の状況
- 生活リズム
- 学習への意欲
- 将来への希望
複数の選択肢を検討する
見学・体験の活用 実際に足を運んで、お子さんの反応を確認することが重要です。
段階的なアプローチ いきなり学校的な環境ではなく、個別支援から始めて徐々に集団参加を目指すことも有効です。
本人の意思を尊重 何より、お子さん自身の希望や意思を最優先に考えましょう。
保護者の皆さんへのメッセージ
「正解」はお子さんによって違う
いろどり学園は画期的な取り組みですが、すべてのお子さんに適しているわけではありません。お子さんの個性や特性に応じて、最適な環境は異なります。
長期的な視点を持つ
現在の状況だけでなく、お子さんの将来的な成長も視野に入れて支援環境を選択しましょう。
専門家との連携
一人で判断せず、教育関係者、療育の専門家、相談支援専門員などと連携して、最適な支援体制を構築しましょう。
よくある質問
Q1. いろどり学園と放課後等デイサービスの併用は可能ですか?
A1. 併用可能です。いろどり学園は正式な学校のため、放課後の時間を活用した療育支援との組み合わせが効果的な場合があります。
Q2. 発達障害の診断がなくても放課後等デイサービスは利用できますか?
A2. 市町村が療育の必要性を認めた場合は利用可能です。まずはお住まいの区の支援課にご相談ください。
Q3. どの支援が最適か判断に迷う場合はどうすればよいですか?
A3. 相談支援事業所での相談をお勧めします。専門的な視点から、お子さんに最適な支援を提案してもらえます。
まとめ:お子さんにとっての最適解を見つける
さいたま市の「いろどり学園」は素晴らしい取り組みですが、向き・不向きがあります。大切なのは、お子さんの特性や状況を正しく理解し、最適な支援環境を見つけることです。
重要なポイント
- お子さんの個性を理解する:興味・関心、困難さ、学習スタイルを把握
- 複数の選択肢を検討する:公的機関、福祉サービス、民間支援を比較
- 専門機関との連携:FabriCoのような専門的な療育支援も視野に入れる
- 包括的な支援体制:相談支援事業所を活用した全体調整
- 本人の意思を尊重:お子さん自身の希望を最優先に
お子さんが自分らしく成長できる環境は必ずあります。焦らず、様々な選択肢を検討しながら、お子さんにとっての最適解を見つけていきましょう。
この記事は、さいたま市の教育・療育選択肢について、お子さんの適性を考慮した選択指針をまとめたものです。個別のご相談については、各専門機関への直接のお問い合わせをお勧めします。