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【障害児とプログラミング】一人ひとりに合わせた個別指導の実践と効果

2025.04.24

こんにちは、CotoMirai代表の勝村航太です。

最近、放課後等デイサービスの設立準備を進めている中で、「障害のある子どもたちにとってのプログラミング教育って、どんな意味があるんだろう?」ということを改めて考える機会が増えました。

実は、私が障害のある子どもたちの教育に関心を持つようになったのは、大学時代の体験がきっかけでした。埼玉大学教育学部で学んでいた時、特別支援教育についても学ぶ機会があり、その後の法政大学大学院キャリアデザイン学研究科での学びも含めて、「一人ひとりの特性に合わせた教育」の重要性を実感してきました。

今回は、そんな経験を踏まえて、障害のある子どもたちとプログラミング教育について、率直にお話ししたいと思います。

「学校的なもの」への違和感から始まった気づき

私がオルタナティブ教育に関心を持つようになった背景には、「学校的なもの」への違和感がありました。

「みんな同じことを、同じペースで、同じ方法で学ぶ」という従来の教育スタイルは、多くの子どもたちにとって合わないことがあります。特に、発達障害や知的障害など、何らかの特性を持つ子どもたちにとっては、なおさらです。

大学で特別支援教育について学んだ時、「合理的配慮」という言葉に出会いました。これは、障害のある人が他の人と平等に参加できるよう、その人の特性に応じて必要な調整を行うという考え方です。

でも、実際の学校現場では、なかなかこの「合理的配慮」が十分に実現されていないのが現状だと感じています。だからこそ、福祉制度を活用したオルタナティブ教育の可能性を探りたいと思ったんです。

プログラミング教育が持つ特別な力

障害のある子どもたちにとって、プログラミング教育はどんな意味があるのでしょうか。実際にCotoMiraiで関わってきた経験から感じることをお話しします。

1. 視覚的で分かりやすい

多くのプログラミング教材は視覚的に作られています。Scratchのようなビジュアルプログラミング言語では、ブロックを組み合わせることでプログラムを作るので、抽象的な概念が苦手な子どもでも理解しやすいんです。

発達障害の中でも、特にASD(自閉スペクトラム症)の特性がある子どもたちは、視覚的な情報処理が得意な場合が多いので、プログラミングととても相性が良いことがあります。

2. 自分のペースで進められる

ADHD(注意欠如・多動性障害)の特性がある子どもたちは、集中力の波があったり、興味のあることには異常に集中したりすることがあります。

個別指導のプログラミング教育なら、その子の集中力や興味に合わせて、完全にオーダーメイドで学習を進めることができます。集中できない日は短時間で、夢中になれる日はとことん付き合う、そんな柔軟性が大切だと思います。

3. 「正解」へのプレッシャーが少ない

学校教育では、どうしても「正しい答え」を求められがちです。でも、プログラミングでは「動けばOK」「目的が達成できればOK」という考え方ができます。

これまで「間違いを恐れる」傾向があった子どもたちが、「とりあえずやってみよう」「うまくいかなかったら直せばいい」という前向きな姿勢を身につけることができます。

CotoMiraiでの実践例

具体的に、CotoMiraiでどんな配慮をしているか、事例を交えてお話しします(もちろん、個人を特定できないよう配慮しています)。

ケース1:感覚過敏のあるBさん(小学4年生)

Bさんは聴覚過敏があり、大きな音や突然の音にとても敏感でした。最初は教室の環境音(エアコンやパソコンのファンの音など)が気になって集中できませんでした。

私たちの配慮:

  • 静かな時間帯(午前中の早い時間)での受講
  • イヤーマフの使用を許可
  • 音の出るプログラムを作る時は、音量を事前に調整
  • 集中が途切れた時のクールダウンスペースの確保

結果として、Bさんは自分のペースでプログラミングを楽しめるようになり、今では音楽と連動するプログラムを作るのが得意になっています。

ケース2:文字の読み書きが苦手なCさん(小学6年生)

Cさんは学習障害(LD)の特性があり、文字の読み書きがとても苦手でした。学校では「勉強ができない子」というレッテルを貼られがちで、自信を失いかけていました。

私たちの配慮:

  • ビジュアルプログラミングからスタート(文字入力を最小限に)
  • 説明は口頭中心で、図や動画を多用
  • 文字入力が必要な場面では、予測変換やコピー&ペーストを活用
  • 完成した作品の良い点を具体的に褒める

Cさんは論理的思考力がとても高く、複雑なゲームロジックを考えるのが得意でした。プログラミングを通じて「自分にも得意なことがある」と気づき、学校での自信も回復してきています。

ケース3:コミュニケーションが苦手なDさん(中学1年生)

Dさんは自閉スペクトラム症の特性があり、人との コミュニケーションがとても苦手でした。質問することも、分からないことを伝えることも困難な状況でした。

私たちの配慮:

  • 一対一の個別指導を基本に
  • 質問しやすい環境づくり(選択肢を用意するなど)
  • 作品を通じたコミュニケーションを重視
  • 定期的な振り返りの時間を設ける

面白いことに、Dさんは自分の作ったプログラムについて説明する時は、とても饒舌になるんです。好きなことを通じてなら、コミュニケーションができることが分かりました。

法政大学大学院での学びを活かして

法政大学大学院キャリアデザイン学研究科で学んだことは、障害のある子どもたちの支援にとても役立っています。

特に印象的だったのは、「キャリア」というのは「職業」だけでなく、「その人らしい生き方」全体を指すという考え方でした。

障害のある子どもたちにとって、プログラミング教育は単なる技術習得ではなく、「自分らしい生き方」を見つけるきっかけになることがあります。

「学びの構え」と特別支援教育

CotoMiraiで大切にしている「学びの構え」(探求心・ことば・情報活用)は、特別支援教育においても重要です:

探求心: 興味のあることには集中できる特性を活かして、深く学ぶ体験を提供

ことば: 言語コミュニケーションが苦手でも、プログラミング作品を通じた表現を重視

情報活用: 日常生活でも使える問題解決のスキルを、プログラミングを通じて身につける

放課後等デイサービスでの展開

現在準備中の放課後等デイサービスでは、プログラミング教育をより本格的に療育プログラムとして取り入れていく予定です。

個別支援計画との連携

一人ひとりの特性やニーズに合わせた「個別支援計画」を作成し、それに基づいてプログラミング教育の内容や方法をカスタマイズします。

例えば:

  • 微細運動が苦手な子:大きなブロックやタッチスクリーンを活用
  • 集中時間が短い子:5分単位の短いタスクに分割
  • 社会性の発達を促したい子:ペアプログラミングや作品発表の機会を設ける

他の療育プログラムとの組み合わせ

プログラミング教育単体ではなく、SST(ソーシャルスキルトレーニング)やOT(作業療法)的なアプローチと組み合わせることで、より総合的な支援を目指します。

保護者の方との連携

障害のある子どもの支援において、保護者の方との連携は欠かせません。

定期的な情報共有

月に一度の面談を通じて:

  • プログラミング活動での様子や成長
  • 家庭での変化や気づき
  • 今後の目標設定や方針の調整

家庭でできるプログラミング活動のアドバイス

教室での学びを家庭でも継続できるよう:

  • 家庭でも使えるプログラミングアプリの紹介
  • 親子で楽しめる簡単な課題の提案
  • 子どもの興味を広げるための資料提供

「ビジネス的には飽和している」と言われるけれど

放課後等デイサービスは「ビジネス的には飽和している」と言われることがあります。確かに、数だけ見れば多いのかもしれません。

でも、私がやろうとしているのは、単なるビジネスではありません。「学校的なものにうまく馴染めない、壁を感じる子どもたちの居場所作り」が目的です。

プログラミング教育を軸にした放課後等デイサービスは、まだまだ少ないのが現状です。そして、本当に一人ひとりの特性に合わせた個別対応ができる事業所は、もっと少ないと思います。

未来への展望

これからも、プログラミング教育を通じて障害のある子どもたちの可能性を広げていきたいと考えています。

テクノロジーの活用

AI技術の発達により、一人ひとりの学習パターンに合わせた、より精密な個別指導が可能になってきています。これらの新しい技術も積極的に取り入れていきたいです。

地域との連携

特別支援学校や療育センター、相談支援事業所などとの連携を深めて、地域全体で子どもたちを支える仕組みづくりにも貢献したいと思います。

就労支援への展開

将来的には、プログラミングスキルを活かした就労支援にも取り組んでいきたいです。在宅ワークやフリーランスなど、多様な働き方が広がる中で、障害のある人たちの新しいキャリアの可能性を探っていきたいと思います。

最後に:一人ひとりの「やりたいこと」を大切に

障害があるかないかに関わらず、すべての子どもは一人ひとり違います。その違いを「問題」として捉えるのではなく、「その子らしさ」として受け入れることが大切だと思います。

プログラミング教育は、そんな「その子らしさ」を活かしながら、新しい可能性を見つける手段の一つです。

CotoMiraiの理念である「やりたいコトを声にしよう。カタチにしよう。」は、障害のある子どもたちにとっても、とても大切なメッセージだと思います。

周りの大人が「この子には無理だろう」と決めつけるのではなく、「この子は何をやりたがっているんだろう?」「どうしたらそれを実現できるだろう?」と考えることから、本当の支援が始まるのではないでしょうか。

これからも、一人ひとりの子どもたちと向き合いながら、プログラミング教育を通じた新しい支援の形を模索していきたいと思います。


CotoMiraiの障害児支援について

CotoMiraiでは、発達障害や知的障害など、様々な特性を持つお子さんへの個別対応を行っています。

主な配慮内容:

  • 完全個別指導による一人ひとりのペースに合わせた学習
  • 感覚過敏や注意特性に配慮した環境調整
  • 視覚的で分かりやすい教材の使用
  • 保護者の方との密な連携

今後の展開:

  • 放課後等デイサービスでのプログラミング療育プログラム
  • 個別支援計画に基づいたオーダーメイド支援
  • 他の療育プログラムとの連携

お問い合わせ・相談はこちら
CotoMirai(コトミライ)
東京都港区南青山1-15-40 ウィステリア南青山1階
https://kids-mirai.jp/

お子さんの特性や興味に合わせたプログラミング教育について、まずはお気軽にご相談ください。