こんにちは、CotoMirai代表の勝村航太です。
プログラミング教育業界で起業して数年が経ちましたが、よく「エンジニア出身ですか?」と聞かれます。実は私、工学系出身ではなく、埼玉大学教育学部臨床教育専修の出身なんです。
この「異色の経歴」が、プログラミング教育業界を客観視する上で、意外と役に立っているなと感じています。今回は、教育畑出身の起業家として、この業界の変遷を見てきて感じたことを率直にお話ししたいと思います。
2020年のビッグウェーブと業界の変化
2020年にプログラミング教育が小学校で必修化される、という話が出てきた時、正直「これはビッグウェーブだ!」と思いました。
私がプログラミング教育に関わり始めた2010年代前半は、本当にニッチな分野でした。「学年に1人の変わった理科好きの子のためのもの」みたいな扱いで、群馬から埼玉まで通ってくる子がいるくらい、選択肢が限られていました。
それが2020年を境に、一気に注目されるようになりました。
有象無象の教材・教室の登場
でも、その一方で感じたのは「若干違うな〜」という違和感でした。
プログラミング教育が話題になるにつれて、いろんな教材や教室が雨後の筍のように出てきました。もちろん、素晴らしいものもたくさんありますが、中には「これって本当にプログラミング『教育』なの?」と疑問に思うものもありました。
エンジニア出身の方が立ち上げた教室では、技術的なスキルは確かに高いのですが、「教育」としての視点が抜けていることがある。一方、従来の学習塾が参入したケースでは、「プログラミング」の本質を理解せずに、暗記型の学習スタイルをそのまま持ち込んでいることがある。
教育学部出身として、そこに違和感を感じたんです。
教育学部で学んだことの価値
埼玉大学教育学部臨床教育専修では、教育方法論や生徒指導、総合学習、教材研究などを学びました。これが、プログラミング教育事業を始める上で、実はとても役に立っています。
子ども理解の重要性
工学系出身の方は、技術的なことは詳しいのですが、「この年齢の子どもにはどんなアプローチが効果的か」「この子の興味関心をどう引き出すか」といった教育的な視点が不足していることがあります。
一方、教育学部で学んだ「子ども理解」の視点は、プログラミング教育においても基本中の基本だと思います。技術を教える前に、まず「その子がどんな子なのか」を理解することから始まるんです。
教材研究のスキル
また、「教材研究」で学んだスキルも活かされています。既存の教材をそのまま使うのではなく、「この子にはどんな教材が合うか」「この内容をもっと分かりやすく伝えるにはどうしたらいいか」を常に考える習慣がついています。
CotoMiraiで新しい教材(Arduinoなど)を導入する時も、技術的な面白さだけでなく、「教育的な価値はあるか」「子どもたちの成長にどう寄与するか」という視点を大切にしています。
法政大学大学院での学びが与えた影響
教育学部を卒業した後、法政大学大学院キャリアデザイン学研究科に進学しました。これは、プログラミング教育事業を考える上で、大きな転換点になりました。
キャリア教育の重要性
プログラミング教育って、「技術を身につけること」が目的だと思われがちですが、実は「キャリア教育」の側面がとても大きいんです。
「将来どんな仕事に就きたいか」「どんな大人になりたいか」「そのために今何を学ぶべきか」といったことを考えるきっかけとして、プログラミング教育は非常に有効だと思います。
大学院で学んだ「キャリアデザイン」の理論が、CotoMiraiの教育理念「やりたいコトを声にしよう。カタチにしよう。」の基盤になっています。
「教育の出口」を意識するようになった
大学院での学びで特に大きかったのは、「教育の出口をしっかり考えないといけない」と切に思うようになったことです。
小学生の頃は楽しくプログラミングを学んでいても、中学生になると受験や塾に「絡め取られちゃう」ことが多いんです。せっかく育った「学びの構え」が、従来の詰め込み型教育で潰されてしまうのは、本当にもったいない。
だからこそ、プログラミング教育から学童保育、そして予備校まで、一貫した教育理念で事業を展開する必要があると考えるようになりました。
29歳・父親としての視点
現在29歳で、1歳の息子がいます。この「父親」という立場も、事業に大きな影響を与えています。
「自分の子どもに受けさせたい教育」を基準に
事業を考える時、「これは自分の子どもに受けさせたい教育だろうか?」ということを基準にするようになりました。
技術的に優れていても、子どもの個性を無視した画一的な教育では意味がない。逆に、個性を大切にしすぎて、将来に必要なスキルが身につかないのも問題です。
そのバランスを取るために、「学びの構え」(探求心・ことば・情報活用)という概念を大切にしています。これらは、技術の進歩がどんなに速くても、普遍的に必要な力だと思います。
10年後、20年後の教育を見据えて
息子が小学生になる頃、プログラミング教育はどうなっているでしょうか。おそらく今とは全く違う形になっていると思います。
だからこそ、流行に左右されない「本質的な教育」を提供したいと考えています。プログラミングは手段であって、目的は「その子らしい生き方」を見つけることだと思うんです。
業界の10年間の変遷を見てきて
この10年間で、プログラミング教育業界は本当に大きく変わりました。
2010年代前半:黎明期
- 「プログラミング教育」という言葉すらなかった
- 「STEM教育」として論理的思考や問題解決能力の育成に注目
- 一部の理科好きの子のためのニッチな分野
2010年代後半:認知拡大期
- Scratchの普及により、子どもでもプログラミングが身近に
- 2020年必修化の発表により、急激に注目度アップ
- 多くの教室や教材が登場し始める
2020年代前半:混沌期
- 必修化により一気にメジャーな分野に
- 質の高い教室もあれば、そうでないものも混在
- 「プログラミング教育とは何か」の定義が曖昧な状況
これから:成熟期への移行
今後は、量的拡大から質的向上へのシフトが必要だと思います。「プログラミングができる」ではなく、「プログラミングを通じて何を学ぶか」が重要になってくるでしょう。
教育者視点でのビジネス展開
起業家として事業を考える時も、「教育者」としての視点を忘れないよう心がけています。
短期的な利益より長期的な価値
プログラミング教育は、短期的な成果が見えにくい分野です。「今日習ったことが明日のテストで出る」わけではないですから。
でも、だからこそ長期的な視点が大切だと思います。「この子が大人になった時、この経験がどう活かされるか」を常に考えています。
「規模の拡大」より「質の向上」
ビジネスとしては、教室数を増やしたり、生徒数を増やしたりすることで売上を伸ばすのが一般的です。
でも、CotoMiraiでは「規模の拡大」より「質の向上」を重視しています。一人ひとりの子どもに本当に必要な教育を提供するためには、どうしても少人数での個別指導が必要だからです。
新しいもの好きで「ちゃんとやる」のが苦手な自分
正直に言うと、私は新しいもの好きで、「ちゃんとやる」というのが苦手です(笑)。だからこそ、しょっちゅういろんなところでミスをしてしまいます。
でも、そんな私をフォローしてくれる優秀なスタッフがたくさんいます。経営者として一人で全てをやろうとするのではなく、それぞれの得意分野を活かしたチーム作りを心がけています。
「完璧」より「挑戦」
子どもたちにも、「完璧にやること」より「新しいことに挑戦すること」の大切さを伝えたいと思っています。
プログラミングでエラーが出た時、「失敗した」と思うのではなく、「新しい発見があった」と捉える。そんな前向きな姿勢を育てることが、これからの時代には特に重要だと思います。
複数事業を通じた一貫した教育理念
現在、プログラミング教育(CotoMirai)、学童保育(じぶんごとラボ)、放課後等デイサービス、そして予備校と、複数の事業を展開していますが、すべてに共通しているのは「学校っぽくない学び」という理念です。
Un-School構想の実現
「みんな同じ時間に同じところで、同じ内容を学ばなくてもいい」「自分のやりたいことをやりたいと言える」「自分に合った学び方を知っている」「自分のキャリアを自分で切り拓ける」
この理念を、それぞれの事業を通じて実現していきたいと考えています。
これからの10年への展望
プログラミング教育業界は、これからも大きく変化していくと思います。
AI時代のプログラミング教育
AIの技術が発達する中で、「プログラミングスキル」の価値は変わっていくでしょう。でも、「プログラミング的思考」や「学びの構え」の価値は、むしろ高まっていくと思います。
個別最適化された教育の実現
テクノロジーの発達により、一人ひとりに完全に最適化された教育が可能になってくるでしょう。CotoMiraiでも、そうした新しい技術を積極的に取り入れていきたいと思います。
社会全体での教育観の変化
「学校教育が全て」という従来の価値観から、「多様な学びの選択肢がある」という価値観への転換が進むと思います。その流れの中で、プログラミング教育が果たす役割は大きいでしょう。
最後に:未来の教育を一緒に作っていこう
教育畑出身のプログラミング教育起業家として、この業界を外から見ても中から見ても感じるのは、「まだまだ可能性に満ちている」ということです。
技術的な進歩は素晴らしいですが、それを「教育」として昇華させるためには、教育に対する深い理解と愛情が必要だと思います。
これからも、子どもたち、保護者の皆さん、そして一緒に働くスタッフと共に、「未来の教育」を作っていきたいと思います。
「やりたいコト」を声にして、それを形にできる。そんな社会を、一歩ずつ実現していきましょう。
プログラミング教育起業家・勝村航太について
経歴:
- 埼玉大学教育学部臨床教育専修 卒業
- 法政大学大学院キャリアデザイン学研究科 修士課程修了
- 埼玉大学STEM教育研究センター 学生研究員→運営スタッフ
- 海外(タイ、インド、アメリカ)でのプログラミング教育実践経験
現在の事業:
- CotoMirai(プログラミングスクール)代表
- じぶんごとラボ(学童保育)運営
- 放課後等デイサービス設立準備中
- 予備校事業準備中
教育理念: 「学校っぽくない学び」を通じて、一人ひとりの子どもが「やりたいコト」を見つけ、自分らしいキャリアを切り拓けるよう支援
CotoMiraiについて
東京都港区南青山1-15-40 ウィステリア南青山1階
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