こんにちは、CotoMirai代表の勝村航太です。
「学童保育って、宿題をして、おやつを食べて、友達と遊ぶだけの場所」
そんなイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。でも、私はそこに疑問を感じていました。子どもたちが平日の放課後という貴重な時間を過ごす場所が、本当にそれだけでいいのだろうか、と。
今回は、私がなぜ学童保育にプログラミング教育を持ち込むことになったのか、そしてそれがどんな変化をもたらしているのかについて、お話ししたいと思います。
学童保育への問題意識
私が学童保育に関わるようになったのは、埼玉大学でSTEM教育に取り組んでいた時の経験がきっかけでした。
平日の夕方、プログラミング教室に通ってくる子どもたちの話を聞いていると、「学童では宿題やって、あとは友達とゲームしてるだけ」「つまらない」という声をよく耳にしたんです。
一方で、土曜日や日曜日にプログラミング教室に来た時の子どもたちは、目を輝かせて取り組んでいる。同じ子どもなのに、なんでこんなに違うんだろう?
「預かるだけ」から「育てる場」へ
学童保育の歴史を振り返ると、元々は「働く保護者が安心して仕事ができるよう、子どもを安全に預かる場所」として始まりました。
でも、時代は変わっています。共働き家庭が増え、子どもたちが学童で過ごす時間は長くなっています。週5日、1日3〜4時間。これって、学校にいる時間とほぼ同じなんです。
そんな大切な時間を、ただ「預かるだけ」で過ごしていいのでしょうか?
市川「じぶんごとラボ」での実験
2021年、市川で学童保育「じぶんごとラボ」の立ち上げに関わることになりました。ここで、私たちは従来の学童保育とは全く違うアプローチを試してみることにしたんです。
コンセプト設計から関わった意味
普通、学童保育にプログラミング教育を「後から持ち込む」のは難しいものです。既存のスケジュールがあり、スタッフの体制があり、保護者の期待値がある。
でも、「じぶんごとラボ」では、コンセプト設計の段階から関わらせてもらうことができました。これが大きかったんです。
私たちが設定した基本方針:
- 子どもの主体性を何より大切にする
- 「やらされる活動」ではなく「やりたい活動」を中心に
- 学びの要素を日常に自然に組み込む
- 一人ひとりの個性や発達段階に合わせる
プログラミング教育の位置づけ
じぶんごとラボでは、プログラミング教育を「特別な習い事」として扱うのではなく、日常の一部として組み込みました。
具体的な取り組み:
- 週2〜3回、30〜60分のプログラミング時間
- 学年混合でのグループ活動
- 個別の進度管理とフォロー
- 作品発表会や他の子との作品交流
大切にしたのは、「プログラミングができるようになること」ではなく、「プログラミングを通じて考える力を身につけること」でした。
子どもたちの変化:具体的な事例
実際に、プログラミング教育を取り入れることで、子どもたちにどんな変化が生まれたのか、具体的な事例をお話しします(もちろん、個人が特定されないよう配慮しています)。
事例1:Aさん(小学2年生)の変化
Aさんは、最初は引っ込み思案で、学童でも一人で本を読んでいることが多い子でした。
プログラミング導入前:
- 集団活動にはあまり参加しない
- 自分から発言することが少ない
- 「どうせできない」と諦めがち
プログラミング活動を通じて:
- Scratchでアニメーションを作ることに夢中になった
- 自分の作品を友達に見せたがるようになった
- 困っている年下の子にプログラミングを教えるようになった
- 「今度はこんなのを作りたい」と自分からアイデアを出すように
今では、Aさんは学童の中でも積極的に発言し、リーダーシップを発揮する子になっています。
事例2:B君(小学3年生)の変化
B君は、じっとしていることが苦手で、宿題の時間もなかなか集中できない子でした。
プログラミング導入前:
- 宿題に集中できない(15分が限界)
- 他の子の邪魔をしてしまうことがある
- スタッフから注意されることが多い
プログラミング活動を通じて:
- ロボットプログラミングに興味を持った
- 1時間以上集中して取り組めるようになった
- 失敗しても「なんでかな?」と考えるようになった
- 計画を立てて物事を進められるようになった
B君の保護者の方からは、「家でも落ち着いて宿題ができるようになった」という報告をいただいています。
事例3:Cさん(小学1年生)の変化
Cさんは、数字や計算が苦手で、算数に対して苦手意識を持っていました。
プログラミング導入前:
- 「算数は嫌い」と言うことが多い
- 数を数えるのも嫌がる
- 計算問題になると諦めてしまう
プログラミング活動を通じて:
- キャラクターを動かすために座標の概念を覚えた
- 「10歩動かす」「5回繰り返す」など、数字を使うことに抵抗がなくなった
- 「計算もプログラミングの一種」と捉えるようになった
算数の宿題でも、「これってプログラミングみたい」と言いながら取り組むようになりました。
保護者からの反応
学童保育にプログラミング教育を導入することについて、保護者の方からはどんな反応があったのか、率直にお話しします。
最初は半信半疑だった保護者の方々
正直、最初は「学童でプログラミングなんて必要ないんじゃない?」「普通に遊んでればいいのに」という反応も多くありました。
よくあった質問:
- 「小学生にプログラミングって難しすぎない?」
- 「習い事じゃないんだから、そこまでしなくても…」
- 「宿題の時間が減ったりしない?」
- 「パソコンばかりで目が悪くならない?」
これらは、とても自然で当然の疑問だと思います。
実際に始まってからの変化
でも、実際にプログラミング活動が始まって、子どもたちの変化を見ていただくと、保護者の方の反応は大きく変わりました。
保護者の方からの声(実際にいただいたコメント):
「家で『今日学童で何したの?』と聞くと、以前は『べつに』とか『遊んだ』としか言わなかったのに、今は目を輝かせてプログラミングの話をしてくれます。こんなに夢中になれることがあるなんて、びっくりしました。」(小2男子の母)
「うちの子は引っ込み思案だったのですが、学童で作ったプログラムを家でも作りたいと言い出して。今では、自分から『今度はこんなのを作りたい』と話してくれるようになりました。」(小1女子の母)
「宿題への取り組み方が変わりました。以前は嫌がってなかなか始めなかったのに、今は『これもプログラミングみたい』と言いながら、計画的に進められるようになりました。」(小3男子の父)
全国展開「コトコレクション」の開発
じぶんごとラボでの成功を受けて、「この取り組みを全国の学童保育に広げられないか」と考えるようになりました。
そこで開発したのが、学童保育向けプログラミング教育パッケージ「コトコレクション」です。
学童保育の現場に合わせた設計
一般的なプログラミング教室と学童保育では、求められる条件が全く違います。
学童保育特有の課題:
- 学年がバラバラ(1年生〜6年生)
- 毎日同じ子が来るわけではない
- 専門知識を持ったスタッフがいない
- 限られた時間とスペース
- 比較的低い予算
これらの課題を解決するために、コトコレクションでは以下の特徴を持たせました:
コトコレクションの特徴
1. 完全パッケージ化
- 事前準備は一切不要
- 講師が機材や教材をすべて持参
- 施設側のスタッフ配置も原則不要
2. 個別対応システム
- ワークシートを用いた個別学習
- 学年混合での実施に対応
- 個人の理解度に合わせた進度管理
- 途中入会や欠席にも柔軟に対応
3. 年齢に応じたプログラム
- 年長〜小3をメインターゲット
- 未経験でも「楽しい!できた!」を実感できるステップ設計
- Scratchなど、学校でも使われている教材を中心に構成
4. 現実的な料金設定
- 継続クラス:1回10,000円〜(年40回程度)
- イベント形式:15,000円〜25,000円(人数により調整)
- 学童保育の予算に合わせた価格帯
導入施設での成果
現在、コトコレクションは複数の学童保育施設で導入されており、それぞれで子どもたちの変化が報告されています。
導入施設からの報告例:
- 子どもたちの集中力向上
- 論理的思考力の発達
- コミュニケーション能力の向上
- 学習への意欲増進
- 保護者満足度の向上
業界への影響と反響
学童保育業界は、比較的保守的な業界だと言われることがあります。「安全第一」「無難に運営」という傾向が強く、新しい取り組みには慎重です。
実際の導入状況と反響
現在、コトコレクションは関東地区の4つの学童保育施設で導入されています。まだ小さな規模ですが、実際に導入した施設からは興味深い反響をいただいています。
導入施設からの声:
- 「子どもたちの集中力が向上したように感じる」
- 「保護者の方から『家でもプログラミングの話をしてくれる』という声をいただいた」
- 「他の学童との違いをアピールできている」
- 「思ったより子どもたちが夢中になってくれた」
一方で、課題も見えています:
- 「毎回同じ子が参加するわけではないので、進度管理が難しい」
- 「スタッフがプログラミングに詳しくないので、質問に答えられない時がある」
- 「パソコンやタブレットの台数が限られている」
口コミで広がる関心
まだメディアなどで大きく取り上げられているわけではありませんが、学童保育関係者の間で口コミが広がっています。
最近では:
- 他の学童施設からの見学希望
- 学童保育連合会での情報交換
- 保護者同士のSNSでの話題
- 教育関係者からの問い合わせ
といった形で、少しずつ関心を持ってもらえるようになってきました。
他の教育分野への波及効果
学童保育でのプログラミング教育成功は、他の分野にも影響を与えています。
手応えを感じ始めている段階
現在準備中の放課後等デイサービスでも、学童での経験を活かしたプログラミング療育プログラムを展開予定です。
また、最近では幼稚園や保育園からも「3歳からできるプログラミング活動はありますか?」という問い合わせをいただくことがあります。
企業内学童保育からの相談も1件いただいており、少しずつですが関心が広がっているのを感じています。
課題と今後の改善点
もちろん、すべてが順風満帆だったわけではありません。実際に運営する中で見えてきた課題もあります。
現在の課題
1. 指導者の確保と育成
- プログラミングと子ども理解の両方ができる人材が不足
- 各地域での指導者確保が困難
- 継続的な研修システムが必要
2. 施設による差
- Wi-Fi環境やPC設備の格差
- 施設管理者の理解度の違い
- 子どもたちの習熟度のバラツキ
3. 持続可能な事業モデル
- 適正な料金設定と品質維持のバランス
- 地域格差への対応
- 長期的な効果測定
改善に向けた取り組み
これらの課題を解決するため、以下の取り組みを進めています:
指導者育成プログラムの充実
- オンライン研修システムの構築
- 現場実習を含む認定制度
- 継続的なスキルアップ機会の提供
教材・システムの改良
- より簡単に導入できるパッケージ化
- オフライン環境でも使える教材開発
- 進度管理システムのデジタル化
効果測定の仕組み
- 子どもたちの成長を定量的に測る指標開発
- 保護者満足度の継続的な調査
- 長期的な追跡調査の実施
10年後の学童保育を見据えて
私が学童保育×プログラミング教育に取り組む理由は、10年後、20年後の子どもたちの未来を考えているからです。
変化する社会と求められるスキル
これからの社会では、AIやロボットが多くの仕事を代替するようになります。その中で人間に求められるのは:
- 創造性と想像力
- 論理的思考力と問題解決能力
- コミュニケーション能力と協働力
- 学び続ける意欲と適応力
これらは、まさにプログラミング教育を通じて育てることができる力です。
学童保育の役割の進化
学童保育も、単なる「預かり場所」から「未来を生きる力を育てる場所」へと進化していく必要があります。
10年後の学童保育の姿(私の予想):
- プログラミング教育は当たり前
- AI技術を活用した個別最適化学習
- オンラインとオフラインの融合
- 地域企業との連携強化
- 多様な専門家による支援
全国の学童保育関係者へのメッセージ
最後に、全国で学童保育に関わっている皆さんへのメッセージをお伝えしたいと思います。
小さな一歩から始めよう
「プログラミング教育なんて、うちには無理」と思わないでください。
まずは、月1回のイベントから始めてもいいんです。子どもたちの反応を見てから、継続を検討することもできます。
大切なのは、「子どもたちの可能性を広げたい」という気持ちです。
完璧を求めすぎない
私たちも、最初から完璧だったわけではありません。トライ&エラーを繰り返しながら、少しずつ改善してきました。
失敗を恐れず、子どもたちと一緒に学んでいく姿勢が大切だと思います。
仲間と一緒に
一つの施設だけで完結する必要はありません。近隣の学童保育と連携したり、地域の専門家と協力したり、仲間と一緒に取り組むことで、より良い環境を作ることができます。
小さな革命の始まり
学童保育にプログラミング教育を持ち込む試みは、まだ始まったばかりです。関東4施設という小さなスタートですが、確実に変化は起きています。
子どもたちが目を輝かせてプログラミングに取り組む姿、保護者の方々からの温かい反応、そして口コミで広がる関心。
これらは小さな変化かもしれませんが、私にとっては大きな手応えです。
「やりたいコト」を声にして、それを形にできる。そんな子どもたちを、放課後の時間を使って育てていく。
まだ「革命」と呼ぶには小さな取り組みですが、これから全国の学童保育に、こうした学びの選択肢が広がっていくことを願っています。
学童保育向けプログラミング教育「コトコレクション」について
勝村航太が開発した学童保育向けプログラミング教育パッケージです。
特徴:
- 事前準備不要の完全パッケージ
- 学年混合・個別対応システム
- 専門講師による出張指導
- 学童保育の現場に特化した設計
対象:
- 学童保育施設
- 放課後等デイサービス
- 教育関連施設
- 企業内学童保育
導入相談・お問い合わせ: https://lp.cotoism.com/cotocotocollection/
全国の子どもたちに「学び」のある放課後を提供するため、一緒に学童保育革命を起こしていきましょう。